8月29日から、ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023が開催され、各社から新作モデルが続々と発表されている。ブルガリは「自然が持つ類まれな二面性」をテーマに、素材、色、形、そして同社が受け継いできた希少なサヴォアフェールを、新たな表現と再発見とともに、生まれ変わらせる。
そんなテーマのもとに同社が発表した新作モデルは、合計6種だ。各2本を3幕構成で紹介しており、第1幕では「オクト フィニッシモ」の壮大な物語が、新素材を中心に展開された。
きわめて薄く、そして精巧な外装を与えられたオクト フィニッシモは、ブルガリのウォッチメイキングの進化と成果を示すコレクションのひとつだ。2014年以来、時計の薄さにおいて8つのワールドレコードを打ち立ててきたが、一方でただ薄いのみならず、実用性やデザイン性も妥協されなかった。
そんなオクト フィニッシモは現在、ブルガリコレクションの中でも多彩なバリエーションを展開している。特にチタンやプラチナ、ピンクゴールドにイエローゴールド、セラミックスやタンタルといった、さまざまな素材のモデルがラインナップされてきた歴史を有する。今回、2017年に薄型レコードを獲得したオクト フィニッシモ オートマティック、そして2021年に薄型レコード獲得のオクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダーを主軸に、引き続き“素材”の物語が紡がれていこうとしている。
登場した新作オクト フィニッシモは2種だ。ベーシックな3針のオクト フィニッシモ カーボンゴールドと、複雑機構を搭載したオクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダーのラインナップとなっている。どちらもカーボンのアンスラサイトカラーとゴールドの輝きがコントラストとなっており、オクト フィニッシモのエッジが立った複雑な造形に、どこか近未来的な雰囲気が加わった。
本作のアンスラサイトカラーとゴールドのコントラストは、異なる素材同士を組み合わせることで実現した。外装はチタンをカーボンファイバーでコーティングしている、とのこと。文字盤もカーボンで製造されており、アヴァンギャルドな意匠に仕上がっている。一方でゴールドカラーの針・インデックスが配されたことで、高い視認性、そしてラグジュアリーな雰囲気を獲得している。もっとも、カーボンを用いることの利点は、デザイン面に留まらない。軽量な同素材は薄型の外装と併せて、快適な装着感を備えているだろう。
繰り返しになるが、オクト フィニッシモはきわめて薄い外装が大きな特徴だ。この薄さにおいて、重要な役割を果たしているのがムーブメントである。3針のオクト フィニッシモ カーボンゴールドにはBVL138が、オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダーにはBVL305が搭載されている。いずれも自動巻きモデルだが、前者には6.9mm、後者には7.6mmのケース厚を与えた。シースルーバックからはピンクゴールドを施したプラチナ製のマイクロローター、あるいはコート・ド・ジュネーブ装飾があしらわれたピンクゴールドのブリッジがのぞく。
とりわけパーペチュアルカレンダーを搭載したBVL305への驚きは、記憶に新しい。2021年、ブルガリは7代目のオクト フィニッシモで、世界最薄の自動巻きパーペチュアルカレンダーとしてBVL305搭載モデルを発表したが、これはブルガリがゼロから再設計したムーブメントだ。自動巻きのパーペチュアルカレンダーでありながら、ムーブメント厚はわずか2.75mmであること。また複雑なパーペチュアルカレンダーの表示を文字盤全体に4つに分け、優れた視認性を獲得したことは、ブルガリのウォッチメイキングの非凡さを改めて証明した。
オクト フィニッシモ カーボンゴールドが367万4000円、オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダーが1327万7000円(いずれも税込み)と、国内定価は決して安くない。しかし、アヴァンギャルドなデザインと優れた実用性から、所有欲をおおいにくすぐる新作モデルではないだろうか。